残業代請求と労働基準監督署

 未払い残業代の問題が生じた時に、「とりあえず労働基準監督署に相談してみよう」とお考えになる方は多いと思います。
 労働基準監督署(労基署)は、労働基準法違反の会社を取り締まる機関であり、労働者にとって頼りになる存在です。
 もっとも、必ずしも労基署に相談すれば全て解決できる、というわけではありません。
 残業代請求をお考えの方は、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

労基署は何をしてくれるのか

 そもそも労基署とは、厚生労働省の出先機関(各都道府県に置かれた労働局の下部組織)として、各企業が労働基準関係法令(労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法など)に基づいて適切に雇用を実施しているかどうかを監督し、労働条件の保障や改善を図るとともに、労災保険の給付などを行う行政機関です。

 労基署の監督官は、悪質な条件の下で労働者を働かせたり、残業代を支払わなかったり、危険を防止する十分な措置を講じなかったりなど、会社が労働基準関係法令に違反していないかどうかについて立ち入り調査(臨検)を行い、法令違反が判明した会社に対しては、「指導」や「是正勧告」を行うことができます。さらに悪質なケースでは、強制捜査や逮捕、送検を行う権限も有しています。

 そこで、未払い残業代が発生している場合には、労基署に未払いの事実を申告して調査に入ってもらい、従業員に残業代を支払うよう、労基署の監督官から会社に対して指導や是正勧告をしてもらうことが期待できます。労基署に相談に行くのに費用は特にかかりませんし、給与明細やタイムカードなどの資料を持参すれば、労基署の方で法令に基づいて残業代の計算を行いますので、専門知識も必要ありません。

労基署では解決できない場合
  •  もっとも、労基署は、労働者の残業代を代わりに回収してくれる機関ではありません。労基署の仕事は、あくまで会社の違法状態を是正することにあります。したがって、以下のように、必ずしも十分な解決を図ることができない場合が存在します。

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  • ・労基署は、タイムカードなどの確固たる客観的証拠がなければ、労働基準法違反の事実を認定することは難しいと判断し、基本的には動いてくれません。警察と同じで、違法の疑いがなければ、労基署は動けないのです。
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  • ・労基署が認定する労働時間や残業代は、行政機関という性格上、どうしても証拠上固い部分に限られてしまいますので、必ずしも実際に働いた時間に見合う残業代を算出してもらえるとは限りません。
     この点、裁判などであれば、タイムカードなどの確固たる客観的証拠がない場合であっても、他の様々な証拠から働いていた事実を立証できる可能性があります。すなわち、結果として、より多くの残業代を回収できる可能性があります。
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  • ・労基署の指導や是正勧告に会社が従わず、残業代を支払わない場合に、労基署は残業代の支払いを強制することはできません。労基署が悪質だと判断すれば、刑事事件として立件することもありますが、全ての事案について立件するわけではありませんし、刑事手続では残業代の支払いは命じられません。そのため、会社に強制的に残業代を支払わせるためには、結局、自分自身で訴訟を提起するなどの手続を取る必要があります。
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  • ・労基署が監督・取締権限を持っているのは、労働基準関係法令違反に限られますので、ハラスメント被害などの不法行為や、解雇などの労働契約に関する問題は、労基署では取り扱ってもらえません。そのような問題を抱えていたとしても、労基署では解決することが困難なのです。
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弁護士に相談・依頼するメリット

 以上のように、労基署では、労働者の方々が抱えている個々の問題について、十分な解決を図ることができない場合があります。

 とはいっても、個人ではどのように会社に請求していけばよいのか分からない、とても会社には太刀打ちできない、という方が大半だと思います。

 そのような場合には、是非、弁護士にご相談ください。弁護士は、労働者個人の代理人として、労働者個人の権利の実現をサポートいたします。

 法律相談では、ご持参いただいた資料や伺ったご事情、ご意向を踏まえて、残業代を請求するための道筋や見通しを分かりやすくご説明いたします。

 お手元に十分な資料がないような場合には、どのような証拠をどのような手段で集めればよいのか、という点から検討いたしますので、諦める必要はございません。

 また、残業代に限らず、会社との間の法的トラブル全般について、ご相談いただくことが可能です。

 そして、ご依頼をいただいた場合には、証拠の収集、残業代等の計算、会社への請求、その後の会社との交渉、会社が請求に応じない場合の裁判手続まで、ご自身で行うには大変な手続を、弁護士が代理人としてお引き受けいたします。

 残業代請求では、労働時間の認定や残業代の計算方法など、法的な争いになる場面が多くあります。このような争点で、労働者側に有利な認定を得て、適切・十分な残業代を獲得するためには、残業代請求について豊富な知識・経験を有する弁護士の力が特に必要になると思います。

 初回相談料は無料です。残業代請求をお考えの方は、是非当事務所までご相談ください。

 

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