審査請求により、労災不支給の判断を覆して労災認定を獲得した事例

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<事案の概要>

 相談者は、派遣社員としてトラック配送業務に従事していましたが、脳梗塞を発症して業務中に救急搬送されて入院し、約半年間の休業を余儀なくされました。

 相談者は、連日の長時間労働などが脳梗塞の原因だと考え、ご自身で労災申請(休業補償給付の請求)を行いましたが、労基署は、業務による明らかな過重負荷による発症とは判断できないとして不支給の決定を出しました。

 相談者は、この段階で当事務所にご相談に来られ、労基署の不支給決定に対する不服申し立て(審査請求)をご依頼されました。

<解決に至るまで>

 当事務所は、受任後、速やかに審査請求の申立てをするとともに、労働局に対し、労基署による調査資料の開示を求めました。そして、開示資料を検討したところ、労基署は、極めて不十分な調査しか行っていなかったことが発覚しました。

 相談者の労働時間は、点呼記録表や運転日報(デジタルタコグラフ)に記録され、派遣先会社が管理していました。しかし、労基署はこれらの資料を入手しておらず、派遣元会社から提供された資料(毎日ほぼ同じ時間が形式的に記入されており、相談者の労働実態を反映したものではありませんでした)を基に労働時間の認定をしていました。その結果、労基署の認定では、相談者の時間外労働数は、発症前2か月の平均で月50時間程度にとどまるものと判断されていました。

 脳梗塞のような脳・心臓疾患の労災認定基準では、発症前1か月間に100時間、2~6カ月間に月80時間を超える時間外労働が認められる場合に、労災と認めるものとされていますので、まずは上記の労働時間認定を覆す必要がありました。

 そこで、当事務所は、派遣先会社に連絡を取って点呼記録表や運転日報を入手し、これらの資料に基づき、あらためて労働時間の算定を行いました。すると、相談者の時間外労働数は、発症前2か月の平均で月80時間弱という算定結果が出ました。

 さらに、夏場はトラックの冷凍庫内と車外の気温差が50度前後あり、このような激しい温度差がある場所への頻繁な出入りを繰り返していたことや、休日が少なかったこと等、労働時間以外にも相談者に負荷を与えたと考えられる要因がありました。

 当事務所は、審査請求の手続において、上記を詳細に主張した意見書を提出し、口頭意見陳述の際にもポイントを絞って意見を述べました。

 その結果、相談者の脳梗塞の発症は業務を原因とする労災と認められ、休業補償給付を支給しない旨の労基署の処分を取り消すという決定を獲得し、相談者は無事、労災給付(治療費、休業補償)を受けることができました。

<解決のポイント>

 労基署により労災不支給と判断された事案でも、弁護士が独自に証拠を収集し、労基署の調査の不十分な点を指摘して適切な主張立証を行ったことで、労基署の判断を覆し、労災認定を獲得することに成功しました。

 労災認定を獲得できた要因としては、労基署の認定を大きく上回る労働時間を認めさせたことに加え、労働時間以外の負荷(作業環境の過酷さ)が考慮されたことも大きかったといえます。

 このように、複雑な事案で労災認定を獲得するためには、労災認定の実務の考え方を正しく理解し、適切な主張立証を行うことがとても重要です。

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